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                                  1969卒  木澤 守

 「学びたい」は人間の本能である。

 現在64歳である。今年の4月から、池袋にある立教セカンドステージ大学(本科1年コース)で学んでいる。この大学は文科省認可の大学ではなく立教大学が提供する生涯学習の場である。
 大学という知的インフラのそろった環境のなかにおかれるのは、高崎での学生時代以来四十数年ぶりになる。日々学びの楽しさを感じている。この生涯学習の目的は、セカンドステージをどう生きるか自らがデザインすることである。そのためカリキュラムは、自ら考えるという視点に立って@高齢化社会の教養科目 Aコミュニティデザインとビジネス科目Bセカンドステージ設計科目Cゼミナール・修了報告書で構築されている。テスト、レポート、論文等での成績評価もあり所定の単位取得が修了要件。従い、受講生側にはカルチャースクールとは違う緊張感もある。「今更学んだところで何になる。学者にでもなろうというのかい」と友人に言われたが、そうではない。ここで学ぶことはもっと実践的なことであり、生き方へのヒントを与えてくれるのである。
 前期で印象にのこった授業を三つ紹介しておこう。
 一つは立花隆先生の、現代社会論である。
(戦後世界がどのように形成され、どのようなベクテルで突き動かされ、今日ただ今の状況にたどりついたのか)。その講義のなかで、日本が何故太平洋戦争を始めたのか、何故もっと早くやめることができなかったのか、また天皇に戦争責任はなかったのかという点が、次々と明快に説明がされた。これらの点については小生にとっては長年にわたりいつも喉にひっかかった骨のようになっていた疑問であったが、これでクリアーになり、人生の大きな宿題の一つを終えたかのように感じている。
 二つ目は古谷野亘先生の社会老年学である。
社会老年学とは、幸福に老いるための条件を明らかにすることを究極の課題とする。老人の学問ぐらいのつもりで選択したが、幸福の条件を真正面から追及するという学問に遭遇したことは驚きであった。これまでに数々の研究が行われてきたが、健康と経済的安定が、幸福な老いの前提条件であることは確認されている。これらの条件の上にどのような高齢期の生活を作り上げるかであるが、主観的幸福観の高揚をもたらす要因が人によって異なることからいままで解明ができてない。主観的であるが故に、いつまでも課題でありつづけるのかもしれない。
 三つ目は、藤井敦史先生の社会的企業論である。
21世紀を担う新しい組織として、NPO、社会的企業なる言葉は新聞で見ない日はない。社会的企業がどのような背景のなかで登場し、欧州や日本においてどのような現状にあるのか、また社会的企業の成長を支えている制度的条件並びに社会的条件は何なのかを理論的、構造的に解説をしてくれた授業である。 新聞・雑誌ではわからない実態を、自分の経験に基づき、えぐりだして解説してくれた。

 「学びたい」は人間の本能である。齢を重ねても知的欲望は沸々と湧いてくるし知のモチベーションは衰えを知らない。生きていくということは、自分の周辺世界がどのようなものか学び続けることである。其の意味で、人生は生涯学習なのである。
 
                                           以上