「東京から遠野へ 過渡期を生きる
                
                         2009年卒 富川 岳 
 
  ひとつ上の尊敬する先輩からバトンを託されました。162回目のリレー随想を担当させていただく富川岳です。現在、大学卒業後に7年間住んだ東京を離れ、この4月から岩手県遠野市に移住し、プロジェクトの立ち上げに奮闘する日々を送っています。  
 
 このプロジェクトは、地域の資源と起業家、企業、行政をコラボレートさせ、その場に新たな産業やコミュニティを生み出すことを目的としている、Next Commons Lab(http://nextcommonslab.jp/)というものです。 今年、第一弾のフィールドパートナーとして遠野で、ビール、発酵、子育て、デザイン、住宅など10のプロジェクトを用意し、そこに起業家候補を募集して彼らを3年間インキュベートしながら事業を支援していきます。立ち上げの経緯としては、近年の、人材の都心部への一極集中や地方のコミュニティの形骸化などを問題意識としており、”田舎で暮らしたい” と行った牧歌的なものではなく、自分のやりたいことができるプラットフォームといった部分で興味を持ってもらい、志ある人材が地域へ入っていく流れを作ろうとしています。現在、私はこのプロジェクトの共同創業メンバー・運営事務局として日々様々な準備を行っていますが、魅力的な方々が集まってきており、これからがとても楽しみです。  さて、ここまで書くとあたかもスムーズに移住を決めたように思えますが、7年間働いた広告業界は魅力的な方々がたくさんいましたし、音楽や映画、イベントなど都会のエンターテイメントを中心とした刺激的な生活も楽しく、思い切って馴染みのない場所へ拠点を移すことは心理的ハードルもありました。ただ、もともと地域に埋もれている人や場所、モノ・コトを顕在化させる仕事をしたいと思い続けていましたので(卒論のテーマも『地域におけるデザインの力』でした)、来年30歳を迎える今、思い切って地域に入り込みチャレンジすることを決断しました。  
 
4月に遠野にきまして、たくさんの友人が遊びに来てくれています。よく「地域での仕事や生活はどう?」と質問されますが、これまでの広告業界の経験を生かせる仕事もあれば、市民大学や養豚事業などの全く異なる領域の立ち上げや、写真&ライティングなどこれまで趣味でやっていたものを仕事として取り組むなど、これまで使ってこなかった筋肉を鍛え続けている感じがしています。自分の至らないところも日々感じますが、これまでとは異なることにチャレンジしたくて遠野に来たので、必死に生きる後にどこかで自分の成長を感じるものだと信じ、前を向いて走っています。  今年、お世話になった大学のゼミもいろいろと変化があるようで、まさに過渡期だと感じることが多いですが、大学時代に出会った言葉「できるできないじゃない。やるんだ。」の精神で、この先おこるであろう仕事・生活面の変化も攻めの姿勢を忘れず、楽しみながら生活できればと思います。 それでは、今後、数年間の遠野の変化をぜひご期待ください。